初代「ゼルダの伝説」は、「謎解きの妙」「世界観」で語られることが多いですが、私はこのゲーム一番の白眉は「なるほどの快感」だと思っています。
「謎解き」にしても「世界観」にしても、「なるほど!」と腑に落ちる快感がこのゲーム独特の良さであり、以降のシリーズでも他のゲームと一線を画す特徴になっていると考えるからです。
分かった時の適切なリアクションと効果
このイラストに出てくる耳モンスター「ポルスボイス」なんですが、動きがトリッキーでちょっと倒すのが面倒なんです。 でもダンジョン内で、こいつが音に弱いというヒントが得られます。 確かにこいつ、耳がでかくて「それっぽい記号」なデザインです。
で、近くで爆弾を爆発させたりもするんですが効き目が無い。 ……そして、滅多に使うことが無かったファミコンの2Pコントローラーの「マイク」に気付くわけですね。
もしかして、ほんとにこれか……? と、思いつつ、自分で声を出してマイクを使ってみると……
声一発で、画面に出ているポルスボイスが全滅するじゃありませんか。 この一瞬で「ポン!」と全滅するリアクションが気持ちよくて「おおー! なるほど!」と小学生の自分は膝を打ちましたね。
思えば、画面内にあんなに沢山配置してあったのは、マイクに考えを至らせるための障壁だっただけでなく、マイク発動した時のリアクションを最大限に気持ちよくするためだったのかもしれません。
他にも、このでかい甲殻類な「ゴーマ」ですが、こいつは体が固くて目以外の部分を攻撃しても弾かれてしまいます。
ですが、弱点である目がこれ見よがしにデカいので、初見でもすぐにそれとわかるんですよね。
しかも、こいつが(順当にダンジョンをまわれば)最初に出てくるダンジョンでは「弓矢」が手に入るんです。なのでこれを手に入れたばかりのユーザーとしては
「なるほど、これを使えってことね」
となり、勿論これが滅茶苦茶きいて、これまた気持ちよいんです。 ダメージがうまく入った気持ちよさと、推察が当たった気持ちよさ。 本当にうまく組み立てられていると思います。
ゴーマが、目を閉じたり開いたりしていて、攻撃するタイミングあわせも要求してくるあたりがまた、ちゃんと遊びになっててニクかったですね~!
広大なマップにちりばめられた「なるほど」の仕込み
わりとスタート地点からノーヒントでほっぽり出される、今の感覚で言うとムリゲーなくらいに説明が無くて「わかりにくい」ゲームなんですが、作り手がユーザーから引き出したい感情は「なるほど感」なので、この「わからなさ」には意味があると思うんです。
この「わからなさ = 謎」を解決しようとユーザーが自分で色々と試して、正解を見つけて「なるほど!」となる。 あんまり説明しすぎてしまうと、面白さが無くなってしまうんではと。
配置が不自然な岩を押すと動いたり、あやしい壁を爆弾で壊せたり、妙な木を燃やしたり……。 そういったアプローチで「もしかしたらこうじゃないか?」と、試行錯誤して謎を解いていく楽しみが、このゲームにはマップに散在していました。
マイク音声で倒すポルスボイスなんかは、その中でもかなりの変化球でしたけれどもね。
世界観・ストーリーでの「なるほど」への繋がり
「トライフォース」という大きな力を持った三角形の石版がある世界「ハイラル」で、「力のトライフォース」を盗んで悪さを始めた魔人に対抗して、「知恵のトライフォース」を集めて倒す……これが本作のストーリーの大筋です。
本編中では、それ以上のストーリー詳細については語られず、主人公リンク=ユーザーの体験した事のみが本作の物語の全てとなります。 エンディングも、トライフォースの守護者であったゼルダ姫から「貴方はハイラルの英雄です」と言われて、スタッフロールが流れるのみです。
でも、ここでひとつ「待てよ?」が湧き上がってきます。
トライフォースの「トライ」は「トライアングル」の「トライ」。 つまり「3つの」という形容詞です。
トライフォースの形状が三角形の石版状であることから、単純に「三角形のフォース」の意訳であるとも考えられますが、本来の「Tri(トライ)」の意味に立ち返ると「3つの力」と捉えるのが妥当です。
「力のトライフォース」「知恵のトライフォース」という風に、すでに2つのトライフォースがあるわけで……「2つの“トライ”フォース」って何かおかしいですよね。
では、3つ目のトライフォースは?
裏面(一度クリアするとハードモードの裏面が遊べました)をクリアしてもそれが判明しないと分った時、私は当時小学生ながらも「なるほど、これ続編が出るんだな」と思ったのでした。
「謎」と「なるほど」で包み込んでくれた「ゼルダの伝説」
最後の最後まで謎かけと「なるほど」をくれた「ゼルダの伝説」。 私にとってこのゲームは、そういう意味で粋で、懐の深い大人のようなゲームでした。
ただのオモチャや娯楽ではなく……いや、あくまでオモチャや娯楽コンテンツのまま、遊び手である私を大きな思慮をもって包み込んでくれた本作は、今でも私の中で伝説級の体験として光り輝いています。
そしてその系譜は、シリーズ作品にもずっと受け継がれて私を楽しませてくれています。
最新作のSwitch版「ブレスオブワイルド」はもう、「なるほどゼルダ」の真骨頂とも言える傑作で、本当に素晴らしかったです。
これからも、まだまだ「ゼルダの伝説」のシリーズ作品が発表されて行くと思いますが、この「なるほどの快感」が得られる限り、ずっとこのゲームを追い続けていこうと思います。
以上、レトロゲーム絵日記「ゼルダの伝説」でした!
おまけ:右利き左利き?
リンクの利き腕問題です。
ずっとリンクは「左利き」でした。 個人的には「左利きかっこいい」ということで、キャラ付けとしてポジティブに捉えていたのですが、作り手の宮本茂さん直々のコメントで「間違えてそうなった」ということらしいです(笑)。
その後、Wii版の「トワイライトプリンセス」「スカイウォードソード」では、その「Wii コントローラーを振り回す」という仕様から、ユーザーの多くが右利きであることを考慮して、それらの作品に於いてのみリンクが右利きになった経緯はありました。
だったのですが、Switchでの最新作「ブレス オブ ザ ワイルド」では、特にゲーム的な理由も無く右利きになっています。 つまり、長年間違っていた根幹の設定を直したというわけですね。
私は惜しいなあと思います。
きっかけは間違いだったにせよ「サウスポーの剣士」ってかっこいいじゃないですか。 どうしてやめちゃうんでしょう。
私の友達で左利きの奴がいるんですが、そいつ、子供時代「俺、リンクと一緒なんだぜ!」って嬉しそうに言ってましたよ? そういうのってもっと大事にして欲しいのですが……。
「ブレス オブ ザ ワイルド」の次の作品では、また左利きに戻してほしいなあ……。 いいじゃないですか、また違う時間軸と世界線のリンクってことにしてくれれば……なにとぞ…なにとぞ……!
(ほんとにおわり)